農地を耕作目的で取得する場合や賃貸する場合

参考資料:農地六法(令和3年版)、農地・農業の法律相談ハンドブック

① 農地法3条による方法

  農地法3条により農地の貸借や所有権の移転を行うには、譲渡人及び譲受人が農業委員会に許可申請を行い、許可を得ることが必要となります。譲受人は農地法3条の許可要件を満たすことが必要です。

  この農地法3条の許可による貸借や所有権の移転等は、全ての地域で可能な手続きです。

 


農地法3条の許可要件

 ・農地の権利を取得しようとする者又はその世帯員等の農業に必要な機械の所有の状況や農作業に従事する人数からみて、農地の全てを効率的に利用すると認められること

・農地の権利を取得しようとする者又はその世帯員等が、農作業に常時従事すると認められること(原則、年間150日以上の農作業従事)

 ・農地の権利を取得しようとする者又はその世帯員等の農業に供すべき農地の面積の合計が、権利取得後に、50アール以上であること(北海道は2ヘクタール以上) ただし、耕作の目的が草花などの栽培で、経営が集団的に行われるものであると認められる場合や、位置、面積などからみて一体として利用しなければ利用することが困難と認められる農地について、隣接する農地を耕作している者が権利を取得する場合などの例外があります。

 ・農地の権利を取得しようとする者又はその世帯員等が、権利取得後に行う農業の内容並びに農地の位置及び農地の規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生ずるおそれがないと認められること

 

例外的に許可が不要となる場合

 権利取得者が国や都道府県である場合

民事調停法による農事調停によって権利が取得される場合

 ・土地収用法などによって権利が収用または使用される場合

 ・相続・遺産分割・包括遺贈・相続人に対する特定遺贈などにより権利が取得される場合 この場合、取得者は遅滞なく農業委員会に届け出る必要があります。

 

 

 

許可を受けないでした行為の効力と罰則

  その行為の効力は生じないものとされています。3年以下の懲役か300万円以下の罰金に処せられます。

② 農業基盤強化促進法の利用権設定等促進事業による方法

農業経営基盤強化促進法は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立することにより、農業の健全な目的に寄与することを目的にしています。この法律では、市町村等が経営改善に取り組む農業者の農業経営改善計画を認定する認定農業者制度や、経営改善を計画的に進める農業者に対して、農用地の利用の集積を行う利用権設定促進事業等を設け、効率的かつ安定的な農業経営を育成するための措置を総合的に講ずることとしています。この事業では、市町村が農業の担い手(個人・法人等)に農地を集積する農用地利用集積計画案(農地の借り手・貸し手等の同意が必要)を作成し、農業委員会の決定を経て本計画を公告することによって、担い手に農地の利用権(賃借権・使用貸借による権利等)が設定される事業です。

この制度のメリットは、賃借権設定の場合、賃貸人は、契約期間が満了すれば農地の返還を受けることができます。農地法3条の許可を得て賃貸した場合は、貸付期間が満了しても、自動的に契約は終了せず、賃貸借契約は法定更新されます。解約し、農地の返還を受けるには、農地法18条に基づく許可や合意解約等が必要です。また、農地法で規定される下限面積の要件もありません。

 農用地利用集積計画による利用権の設定は、同法基本構想を定めた市町村の市街化区域以外が実施対処地域で、原則、市街化区域では実施できません。

 

③ 農地中間管理事業法による貸借

 農地中間管理事業とは、主に、農地中間管理機構(都道府県に一つに限って知事の指定により設置)が、農地所有者から農地を借り受けます。地域内の分散し錯綜した農地利用を集積し、担い手となる借り手が農地をまとまりのある形で利用できるよう農用地利用配分計画を定め、本計画について都道府県知事が公告することによって、賃借権等を設定する事業です。

  この農地中間管理事業は、市街化区域以外が実施地域となっています。