参考資料:農地六法(令和3年版)、農地・農業の法律相談ハンドブック、農地転用許可制度のあらまし
転用とは、農地を農地以外に変えることです。
自己所有の畑を宅地造成して家を建てる、というように、自己所有の農地を農地以外のものに転用する場合には、農地法4条の許可を得る必要があります。なお、許可が必要な転用には、一時的に農地以外のものに転用する場合も含まれます。例えば、農地を一時的に資材置き場に転用し、しばらくしてからもとの農地に戻すつもりであっても、農地をその間つぶすことには変わりありませんから、農地法4条の許可が必要です。
農地の所有者から農地を買い取り、宅地造成する場合のように、農地を農地以外のものに転用する目的で権利移動する場合には、農地法5条の許可が必要です。一時的に転用する目的で農地を借りるような場合であっても同様です。
農地転用の手続きと要件
農地を転用するためには、許可要件である一般基準と立地基準を共に満たす必要があります。
農地転用を行いたい場合、農業委員会に問い合わせ、転用の見込みがあるか(立地基準)を確認し、立地基準を満たす場合は、一般基準を満たすよう計画を立てます。
農地転用の手続きは、転用を実施したい者が、農業委員会に許可申請書を法定添付書類等とともに提出します。許可が得られれば、申請者に許可書が交付されます。
農地転用の申請は、毎月受付日がありますが、農用地区除外の申請は年に2回など受付が限られているので注意が必要です。
申請の添付書類には、準備に時間を要するものがあります。例えば、住宅を建てるために農地転用の申請をする場合、建物の平面図、立面図、資金証明書などを添付します。これらの書類を用意するには、計画が具体化され、金融機関から融資の承認が得られていることが必要です。
農地転用許可がおりれば、所有権移転が可能です。工事に着工できます。工事完了後には地目変更登記など必要な登記申請を行います。
農地には、農用地区域内の農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地があります。市街地に近接した農地や生産力の低い農地から順次転用されるよう誘導されるため、立地基準(農地区分)に応じ、転用の可否が判断されます。
農用地区内の農地(青地)
農業振興地域は、都道府県知事が農業振興を図ることが相当として指定した地域です。農業振興地域の中で、農地等として利用される区域は、農用地区域と呼ばれ、市町村が指定し、農地に関する施策が重点的に講じられます。
甲種農地
市街化調整区域にある特に良好な営農条件を備えている農地で、次に該当する農地
・おおむね10ヘクタール以上の一団の農地の区域内にある農地で、その区画の面積、形状、傾斜及び土性が高性能農業機械による営農に適する農地
・特定土地改良事業等の施工に係る区域内にある農地で、工事完了の年度の翌年度から8年以内の農地
第1種農地
集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地で、次に該当する農地
・おおむね10ヘクタール以上の規模の一団の農地の区域内にある農地
・特定土地改良事業等の施工(土地改良法に規定する土地改良事業またはこれに準ずる事業で農業用用排水施設の新設又は変更、区画整理、農地の造成など)に係る区域内にある農地
・近傍の標準的な農地を超える生産をあげることができると認められる農地
第2種農地
市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地に近接する区域内にある農地、その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で次に該当する農地
・道路、下水道その他の公共施設又は鉄道の駅その他の公共施設の整備の状況からみて、第3種農地の場合における公共施設等の整備状況の程度に該当することが見込まれる区域内にある農地で次に該当する農地(イ)相当数の街区を形成している区域内にある農地、(ロ)鉄道の駅、軌道の停車場又は船舶の発着場、都道府県庁、市役所、区役所又は町村役場(これらの支所を含む)その他これらの施設に類する施設の周囲おおむね500メートル以内の区域内にある農地
・宅地化の状況が住宅の用若しくは事業の用に供する施設又は公益施設若しくは公益的施設が連たんしている程度に達している区域に近接する区域内にある、おおむね10ヘクタール未満の農地の区域内にある農地
第3種農地
市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内で、次に該当する農地
・道路、下水道その他の公共施設又は鉄道の駅その他の公共施設の整備の状況が次の程度に達している区域内にある農地 (イ)水管、下水道管又はガス管のうち2種類以上が埋設されている道路の沿道の区域であって、容易にこれらの施設の便益を享受することができ、かつ、農地からおおむね500メートル以内に二つ以上の教育施設、医療施設、その他の公共施設又は公益的施設が存する (ロ)農地からおおむね300メートル以内に鉄道の駅、軌道の停車場又は船舶の発着場、高速自動車国道、自動車のみの交通の用に供する道路の出入口、都道府県庁、市役所、区役所又は町村役場(これらの支所を含む)、その他これらの施設に類する施設 のいずれかが存する
・宅地化の状況が次の程度に達している区域内にある農地 (イ)住宅の用若しくは事業の用に供する施設又は公益施設若しくは公益的施設が連たんしている (ロ)街区(道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によって区画された地域)に占める宅地の面積の割合が40%を超えている (ハ)都市計画法8条1項1号に規定する用途地域が定められている(農業上の土地利用との調整が整ったものに限る)
農地区分による許可基準
農用地区内の農地、甲種農地、第1種農地は原則不許可、第2種農地は周辺の土地では事業の目的を達成できない場合や公益性が高い事業等の場合には許可、第3種農地は原則許可
第1種農地であっても次の場合は許可の対象となる。
・農業用施設を建設する場合
・流通業施設、給油所等で国道又は県道沿道区域に建設する場合
・既存施設の拡張で、拡張に係る面積が既存施設の敷地面積の1/2以内の場合
・隣接地と一体的に農地を転用し、農地の面積が全体面積の1/3を超えない場合
・地域において居住する者の日常生活上又は業務上必要な施設で、集落に接続して設置する場合 など
農用地区内の農地を転用する場合には、まず、農用地区除外の申請を行います。
農用地区除外の要件
・農用地区域外に代替すべき土地(宅地、白地)がないこと また、具体的な計画があり、適正な規模であること(過大な面積でないこと)
・農用地区域の集団性が保たれ、農業上の総合的な利用に支障がないこと
・農用地区域内における、効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する、農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれが無いと認められること
・農用地の保全等に必要な施設(ため池、かんがい排水施設、農道等)の機能に支障を及ぼさないこと
・土地基盤整備事業完了後8年以上を経過しているものであること その他、農地法や建築基準法等の関係法令の要件を満たしていることが必要です。
転用の一般的な基準
・申請者に農地転用を行うために必要な資力及び信用があると認められること
・申請に係る農地転用の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていること
・農地の全てを農地転用に供することが確実と認められること
・農地転用の許可を受けた後、遅滞なく、申請に係る農地を申請に係る用途に供する見込みがあること
・申請に係る事業の施工に関して行政庁の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分がされたこと又はこれらの処分がされる見込みがあること
・申請に係る事業の施工に関して法令により義務付けられている行政庁との協議を行っていること
・申請に係る農地と一体として申請に係る事業の目的に供する土地を利用できる見込みがあること
・申請に係る農地の面積が申請に係る事業の目的からみて適正と認められること
・申請に係る事業が工場、住宅その他の施設の用に供される土地の造成のみを目的としないものであること
・農地転用をすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させる恐れがないと認められること
・農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼす恐れがないと認められること
・周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないと認められること
・農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること
・農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないと認められること
・仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するための所有権の取得ではないこと
・仮説工作物の設置などの一時転用等の場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められること
農地法4条の許可が不要な場合
・国や都道府県等が、道路、農業用用排水施設などの地域振興上・農業振興上の必要性が高いと認められる一定の施設の用に供するため、農地を転用する場合
・土地収用法などによって収用した農地を転用する場合
・市街化区域内にある農地をあらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合
・自己所有の2アール未満の農地を農業用施設として利用する目的で転用する場合
農地法5条の許可が不要な場合
・国や都道府県等が、道路、農業用用排水施設などの地域振興上・農業振興上の必要性が高いと認められる一定の施設の用に供するため、権利を取得する場合
・土地収用法などによって権利が収用または使用される場合
・市街化区域内にある農地や採草放牧地についてあらかじめ農業委員会に届け出て権利を取得する場合
許可を受けないでした行為の効力と罰則
農地法4条の許可を受けずに転用した場合には、都道府県知事は、原状回復などの違反是正措置をとるよう命ずることができます。さらに罰則として3年以下の懲役か300万円以下の罰金に処せられます。
農地法5条の許可を受けずに転用目的で勝手に権利移動した場合は、その行為の効力は生じないものとされ、転用工事がすでになされているときは、都道府県知事等は、原状回復などの違反是正措置をとるよう、命ずることができます。さらに罰則として、3年以下の懲役か300万円以下の罰金に処せられます。
施行前
申請地(登記地目は田)と道路の間に水路があります。
(株)SK様事務所
農地転用許可と道路占用許可を取得後、水路に橋を架け、事務所を建設しました。
施行前
耕作放棄地の活用
農地転用許可取得後、太陽光発電施設敷地として活用予定です。